ブラックバスの生態・習性(マニア編)8−視覚
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ブラックバスの視覚についてのお話です。
ブラックバスの視野
ブラックバスは他の魚と同様に眼が横についているため、真上、真下、真後ろ以外の広い方向を見渡すことができます。 なお、横方向の対象物は十数メートル、正面の対象物は数十センチメートルまでの距離にないと焦点を合わせることができません。
また、水から引き上げられたバスが見ている世界は、我々がゴーグル無しで水中に潜ったときのようにぼやけているそうです(Keith A.Jones "Knowing Bass" The Lyons Press)
ブラックバスの色覚
ブラックバスの網膜もヒトと同様にかん体細胞と錐体細胞(視細胞と総称します)をもちます。 (かん体細胞は暗所で活躍しますが色の識別はできません。錐体細胞は明所で活躍し、色彩の識別が可能です。) 視細胞は視神経につながっており、網膜に達した光を視細胞が感知するとその情報が視神経を通じて脳に伝えられることで視覚が発生します。 ここでは色覚について考えるので、錐体細胞に着目します。
ヒトの錐体細胞には「赤・青・緑」を感知する3種類(赤錐体・青錐体・緑錐体と呼びます)があり、これらの細胞の興奮の組み合わせにより脳は様々な色を識別します。 色を識別するためには2種類以上の錐体細胞が必要であり、ヒトは3種類の錐体細胞をもつので色を識別できます。
ではバスの場合はどうでしょうか。 Keith博士の書籍「Knowing Bass(The Lyons Press)」によれば、バスは2種類の錐体細胞(赤・緑)をもつと考えられるそうです (正確に種類数を示した論文はまだないそうです)。 つまり「色を識別するためには2種類以上の錐体細胞が必要である」という原則に則して考えれば、ブラックバスも色を識別できるということになります。 細かいことをいうと、色の識別には錐体細胞の種類数以外に錐体細胞からの刺激を色として識別する能力を脳が持ち合わせている必要がありますが、 Keith博士は先の書籍の中で「Don McCoy博士の研究から、バスの脳は色を識別すると考えられ、特に波長540nm(黄緑色)および610nm(橙色)の光の識別力が高い」と述べています。
また「ブラックバスは青を識別できない」という論がありますが、バスの錐体細胞が赤・緑の2種類であろうというKeith博士の考え方により説明できますし、Don McCoy博士の研究でもそのような結果が出ているそうです。
では、より具体的に、ヒトの眼に映る各色はバスの眼にはどのような色として映るのか。 これもKeith博士の書籍“Knowing Bass(The Lyons Press)”からの引用となってしまいますが、 赤・緑や濃い黄色は赤・緑・黄として、薄い黄色やピンクは色ではなく単なる明るい物として、濃い青や紫は暗い影(灰色や黒色)として映るそうです。 なお、これはイリノイ大学Frank Brown博士の研究結果だそうです。
夜間の視覚(ナイトフィッシングとの関係)
バスは月明かりしかないような夜間でもベイトを食べることができます。 暗い環境での視力はベイトよりも優れているため、マズメ時や夜間のフィーディングはバスにとって好都合なのかもしれません。
ブラックバスの動体視力
“バスは動く物に対して反応する”これはバスフィッシングをする人の間では常識となっています。 何かが動いたとき、それはバスにとって「生き物がいる。食べ物かもしれない」という情報になるのです。 一方で、動かない物は生き物ではないと認識し、関心を持ちません。
では、バスは動く物に対してどのように(視覚的に)反応するのでしょうか。
動く距離について
少し数学を使いますが、バスの眼を中心とした円を考えて下さい。 バスの眼から物体までの距離を半径としたとき、その物体が中心角4度の円弧長以上移動した時、バスは「何かが動いた」と認識するようです。 例えば、バスの眼から50cmの距離にある物体は、(50×2)×π×(4/360)=3.5(cm)だけ移動すれば、バスに(視覚的に)気付いてもらえるということです。 これがどれだけすごい能力なのかは何とも実感しにくいところですが、コイなどと比較すると非常に優れたものであるとのことです。
ただ、あくまでこれは“視覚”に限った話であり、バスが獲物を見つけるにあたっては側線など他の器官も併用していることを忘れてはいけません。
動く速さについて
上記の円弧で考えたとき、1秒間に中心角10〜50度の速度、特に30度(片目の視野の6分の1)の速度で動くものを認識しやすいそうです。
動く方向について
横に動く物と、縦に動く物、バスはどちらを視覚的に捉えやすいのかについて、 これはまだわかっていないそうですが、 おそらく横よりも縦に動く物(フォールする動き)の方が視覚的に捉えやすいのではないかと、分類学的には考えられるそうです。
CFF(臨界融合周波数)について
光の点滅(チカチカ)をどんどん速くしたとき、ついにはそれが融合して一つの光として知覚されるわけですが、そのようになる境目の点滅の速さをCFFといいます。 バスのCFFはヒトの3倍といわれており、つまりものすごい速さでチカチカしている点滅でもしっかり点滅として認識できるということです。 これが釣りとどう関係してくるかというと、ジャーキングしたときのルアーの動きをバスはしっかりと認識できるわけです。 たとえば、(ボーマーのロングAシリーズにもラインナップされていますが)ボディが透明で中板が一枚入っているようなミノーをジャークさせたとき、 ミノーがヒラを打つたびにミノーの姿が「見える」「見えない」を瞬間的に繰り返します。 バスはこの「見える」「見えない」をはっきりと目でとらえることができるということです。 ジャーキングがバスの視覚に訴えるアクションであることが理解できると思います。
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